はじめに

最近、人とのコミュニケーションの方法はLINEやメールなど、電話したり直接話すこと以外にも様々な方法があります。

しかしコミュニケーションをとる時にはほとんど「言葉」を使うのではないでしょうか?

その言葉で、相手のことをまるで催眠術がかかった人のように操ることができるとしたら?

実はそんな方法があるんです。

ここでは言葉で相手を操るミルトン催眠の中でも、すぐに使えるテクニックを5つご紹介していきます。

ミルトン催眠って?

ミルトン催眠は、言葉のコミュニケーションを使いながら相手のことを徐々に催眠状態に持っていく方法です。

発祥は1900年ころのアメリカ。

「英語で行うことが前提とされていること」、そしてこの手法を完成させたミルトン・エリクソン氏があまり長い間活動できなかった(※後述)ため、日本にその技術が入って来たのはほとんど最近のことなんです。

昔から催眠術といえば5円玉を目の前にぶら下げて振り子のように振ったりするイメージがありますが、あれはどちらかと言うと古典的な催眠の手法です。

この方法はほとんど体も心も「深い催眠状態」に落としてしまうので、まるで魔法使いが魔法の解き方を知らないと大変なことになるように、それなりにリスクもあります。

そもそも古典催眠はよほど熟練した人でなければ失敗します。

これに対してミルトン催眠は現代催眠などとも呼ばれます。

意識がはっきりしていてコミュニケーションも取れるのですが、相手はそもそも催眠をかけられていることにも気がつきません。

そしてこの状態で深層心理の中にきちんと言葉が埋め込まれると不思議なことに、その通り行動したり、その通りの気持ちの動きが出てきたりするのです。

ミルトン催眠はお医者さんが作り出した手法

ミルトン催眠はもともとミルトン・エリクソンというアメリカの精神科医が開発した催眠療法の一種です。

実はミルトン・エリクソンは若い頃にポリオにかかり、その上で色覚にも異常があったりと、数々のハンディキャップを持っていました。

この時ミルトン・エリクソンは言葉によって相手を動かすという技術を自ら編み出したのです。これが後のミルトン催眠です。

相手を操るミルトン催眠のカギは「言葉」

ミルトン催眠は特殊な言葉の使い方で、相手を催眠状態に持ち込みます。

例えば、あなたが目上の人と一緒にいるとしましょう。
あなたは今相手と向かい合っていて、背中にドアがあります。

イメージとしてはちょっと厳しいお姑さんキャラのような、年上の女性です。

その時に相手から

「あら、ドアが開いていますね」

と言われたらあなたはどうするでしょう?

おそらく多くの場合はドアが開いていると言われたので、ドアを閉めるでしょう。

ドアが開いていますね、という言葉には「ドアを閉めてください」という命令形も含まれているということをきちんと理解して行動したからです。

これは「ある言葉の中に命令を埋め込む」という、ミルトン催眠の代表的なテクニックです。

ミルトン催眠に入る前には「信頼関係」を作ろう

もちろんミルトン催眠は言葉を使うテクニックですので、相手があなたの言葉をきちんと聞いてくれるような信頼関係がなければ、成功しないと言ってよいでしょう。

初対面の時はこの信頼関係を、いかにスピーディーに作るかが勝負のカギになります。

実はミルトン催眠には催眠の前の初期段階として、この信頼関係を簡単に作る方法も用意されています。

その中でも特にお勧めできるのが、相手の呼吸に自分の行動を合わせるという方法です。

相手が息をした瞬間に緊張感のある話をし、相手が息を吐いた瞬間に少しリラックスできるような内容を話したり、いっそのこと「酸欠になっているみたいだよ、深呼吸してみようよ」といって、一緒に深呼吸するというのも有効な方法です。

このようにしてまず相手の呼吸と自分の行動のペースをリンクさせましょう。

しかし、あまり露骨に行ってしまうと信頼関係を築くことができませんので、本当にわかるかわからないかくらいのさじ加減がポイントです。

「言葉」で相手を操るミルトン催眠テクニック5選

ここからは実際に、言葉で相手を操るミルトン催眠のテクニックを5つご紹介していきます。

どれも元々は英語で使われていたテクニックですが、日本語でも自然に使えるような内容にチューンナップした状態でお届けします。

あえて主語を使わない

あえて主語を言葉の中に入れないという方法があります。

主語いうのは私やあなた、あれ、それ、などです。

例えば

「あなたはとても仕事ができる人で、かっこいいですよね」

という言葉を相手に伝えたとしましょう。

この時、相手は

「いやいや、自分はそんなことないよ」

と、遠慮してしまったり謙遜してしまったりして、とにかくあなたが言っている事を否定しようとします。これではいけません。

相手があなたのことを否定するという癖がついてしまうからです。

これを回避するためにミルトン催眠テクニックでは、

「もう、本当に仕事ができるから、かっこいいよね~」

と、あえて主語を入れません。

こうすることで相手の脳は「主語が自分じゃないから否定する必要がないけれども、とにかく褒められて気持ちよかった」

ということだけを認識します。

こうすることにより相手は、あなたの言葉をより素直に聞いてくれるようになります。

誘導する質問を使う

これは一般的に使われているテクニックでもありますが、相手に何か行動をして欲しい時はそれを直接頼もうとせず、質問にして伝えると心理誘導効果が生まれます。

例えばあなたが相手に

「何か将来の夢ってないの?」

と聞いてみたとしましょう。

すると相手は、将来の夢について語りだすでしょう。

将来の夢を聞かせて欲しいと頼んだわけでもないのに、です。

つまり相手は「自分の意志で」、あなたに将来の夢を話しているのです。

これが反対にあなたから

「将来の夢を聞かせてよ」

と言われていたとすると、相手はあなたに「頼まれたから」将来の夢を話します。

自分から自発的にやっているのと相手に頼まれてやっているのでは、深層心理の中で扱いが全く違います。

自分から自発的にやっているということは、この人のために何かをしたい。

この人のために何かをしたいということは、この人が好き。

という、頭の中での思考回路が生まれることになります。

もちろんたった一つの質問だけでここまでの思考回路になることはありませんが「チリも積もれば山となる」ですね。

否定命令で操る方法

人間の脳は否定形を理解できません。

少し前に人気の恋愛ドラマでも登場人物が言っていた内容ですが、人間は例えば

「今からキリンを想像しないでください」

と言われるとほぼ99.9%キリンを想像します。

このように人間の脳は否定形を理解することができません。

ということは、否定をしておきつつもその「言葉の中に命令を埋め込む」こともできるというわけです。

例えば女性から意中の男性にアプローチする時は

「寝る前に私のこととか思い出さないでね!」

だったり、

「お風呂に入る時に絶対に何があっても私のことを思い出さないでね!」

などの言葉を伝えることで、ストレートに頼み込むよりもはるかに高確率に、相手に思った通りのタイミングで思い通りのことを想像させることができます。

あいまいな言葉で「すりこみ」を

曖昧な言葉は、相手に勝手にイメージさせる力があります。

特に口頭で相手とやり取りしている時って、まるでコントのような行き違いが生まれることがあります。

「社長が事故で渋滞。打合せに遅れます。」

と、

「社長が事故で重体。打合せに遅れます。」

では大きな違いがあるのですが、口頭でやり取りをしていると

「しゃちょうが じこで じゅうたい。 うちあわせに おくれます」

と、どちらも同じ発音になります。

このテクニックを使うと、言葉自体は別の意味を持っているのですが、言葉の響きそのものが耳に残って催眠状態に入るということがあります。

例えば、

「あなたが好きな私の会社の商品で、新商品が出たんだよ」

という言い方。

内容としては「私の会社の商品に新商品が出た」という事しか伝えていないのですが、言葉の響き的には「あなたが好きな私」により大きいパワーがあるので、この部分のみがコマンド(命令)として深層心理に入り込みます。

すると、本人としては特にそういう話をしていないにもかかわらずあなたのことを意識するようになります。

深層心理で意識してしまっているので、たとえ本人が表層心理で嫌がろうともどんどんあなたへの意識は大きなものに育っていきます。

「わかってるよ」の魔法

「私のこと意識してるって、分かってるんだからね!」

このようなことを冗談めかして相手に言ったりすることもあるでしょう。

実はこれも、信頼関係が十分に取れていて、ここまでご紹介してきたようなテクニックを組み合わせていると催眠のコマンド(命令)として相手の意識に刺さります。

相手は分かっているんだからね、という言い方をされると、なんとなく自分の行動や考え方が全て読まれているのではないかと勘違いします。

よく学校の生徒指導の先生や、おまわりさんなどが使うテクニックでもあります。

分かってるんだからね、他に何か言うことあるでしょう?

これが実は、心理的にプレッシャーをかけるアプローチの方法なんです。

様々な現場でプロによって使われるこの方法、普通に話をしていてもいざ面と向かって言われると少しはドキッとするものなんです。

「なんとなく、この人には隠し事をしてもダメかもしれない」と思うようになり、そこに信頼関係が生まれます。

まとめ

今回は言葉で相手を操る方法として、ミルトン催眠のテクニックをご紹介してきました。

もちろん、これは信頼関係の上に成り立つテクニックです。さらにこの言葉を一度使ったからといって、相手が思うままに動くようになるわけではありません。しかし、繰り返し、そして自然に相手にこれらの言葉を使うようにしていると、明らかに相手の反応が変わってくるようになりますよ。